アイディアを形に
素人のように考え、玄人として実行する
金出武雄
「正しい設計」「ベストプラクティス」「効率的な方法」——そんな言葉に縛られていませんか? 生産性とかタイパとか、正直うんざり。ここでは子供のようにあなただけのローカルでパーソナルな「小さなWeb」を作って遊ぶ楽しさを取り戻しましょう。
ステップ1: デザインスプリント「自分だけのWebを考える」

アイディア発散・自由に発想する (30分〜45分程度)
思いついたアイデアを書き出してみましょう。この段階では正しさや実現可能性は気にしません。子供の頃のように自由に考えてください。
例: https://excalidraw.com/#json=zHnSzp3PV18E2Wp9LrIbB,sfpPlgnCwzWfFsbY761Pgg
以下の3つの視点が助けになるかもしれません。
視点1: 自分の困りごとから
日常で「これ、自動化できたらな」「もっと楽にならないかな」と思うことはありませんか?
例:
- 毎月の経費精算が面倒 → 経費管理アプリ
- 読んだ本を忘れる → 読書記録アプリ
- どこに何をしまったか忘れる → 収納場所メモアプリ
- 友達との旅行の割り勘計算 → 精算管理アプリ
視点2: 既存ツールの不満から
普段使っているツールやサービスに「もっとこうだったらいいのに」と思うことはありませんか?
例:
- Excelでの管理が限界 → 専用の管理画面
- メモアプリが複雑すぎる → シンプルなメモ帳
- 入力項目が多すぎる → 最小限のフォーム
- アプリを行き来するのが面倒 → 統合ツール
視点3: 遊び心から!
実用性よりも「作ったら面白そう」「誰かを笑顔にできそう」という動機を大切に。
例:
- 今日の気分で色が変わる日記
- ランダムで今日の運勢を占うアプリ
- 家族だけの写真共有アルバム
- ペットの体重記録グラフ
とにかく自由に、たくさん書き出してみましょう。
アイディアの共有
自分のアイデアを他の人に話してみましょう。順番に発表します。
話すこと:
- どんなアプリを作りたいか(1〜2分)
- なぜそれを作りたいと思ったか
聞く側の役割:
- 「それ面白いね!」「便利そう!」と感じたら絵文字でリアクション
- 「こういう機能もあったら嬉しいかも」と提案
- 批判や否定はしない(この段階では自由な発想が大事)
他の人の話を聞いて、「あ、それいいな」と思ったら、自分のアイデアを変えたり混ぜたりしてもOKです。
ステップ2: 機能を整理する
テーマが決まったら、具体的な機能を整理していきます。
事前準備 (任意)
- Webブラウザ (Chrome、Firefox、Edgeなど最新版、Excalidraw アクセス用)
- テキストエディタ (VS Code、メモ帳など)
- Gitがインストールされていること (任意・Zipダウンロードでも可)
以下を済ませておくとスムーズです。
# テンプレートを事前にクローン
git clone -b template https://github.com/kou029w/todo-template my-app
cd my-app
またはGitHubからZipでダウンロードして展開してもOKです。
Zipでダウンロードする場合:
- https://github.com/kou029w/todo-template/tree/template にアクセス
- 「Code」→「Download ZIP」
- ダウンロードしたZIPファイルを展開
- フォルダを開く
VS Codeで開く場合:
- vscode://vscode.git/clone?url=https%3A%2F%2Fgithub.com%2Fkou029w%2Ftodo-template&ref=template にアクセス
- クローン先のフォルダを選択
アイデアを絞る
いくつかアイデアが出たら、今回作るものを1つに絞りましょう。
以下の質問に答えられるか確認してみてください。
- 何ができる?: 一言で説明できる?(概要)
- なぜ作る?: 自分がワクワクする理由は?(動機)
- どこまで作る?: 最低限動くために必要な機能は何?(実現可能性)
迷ったら、一番ワクワクするものを選んでください。技術的に難しそうでも、気にしなくて大丈夫。作りながら学べます。
機能を書き出す
思いつく機能を全部書き出しましょう。この段階では取捨選択せず、自由に発想します。
優先順位をつける
書き出した機能に優先度をつけます。ここではMoSCoW分析での優先度付けの例を紹介します。
| 分類 | 意味 | 例(やることリスト) |
|---|---|---|
| Must | これがないと成り立たない | 追加、一覧、完了切替 |
| Should | できれば実装したい | 編集、削除、期限設定 |
| Could | 時間があれば | 検索、カテゴリ分け |
| Won’t | 今回は見送り | 複数ユーザー、通知 |
優先度の分析ができたら最初はMustだけに集中しましょう。動くものができてから機能を追加する方が、確実に前に進めます。
テンプレートのルートディレクトリに README.md を編集して、以下の内容を記入していきましょう。
# (プロジェクト名)
## 概要
(一言で何ができるアプリか)
## 機能
### Must (必須)
- [ ] 機能A
- [ ] 機能B
- [ ] 機能C
### Should (重要)
- [ ] 機能D
- [ ] 機能E
### Could (時間があれば)
- [ ] 機能F
- [ ] 機能G
### Won't (今回は見送る)
- 機能H
- 機能I
## 画面構成
- 画面名:概要
- 画面名:概要
- 画面名:概要
## データ構造
(主要なデータの型定義)
## APIエンドポイント
(REST APIの設計)
## 技術選定
- フレームワーク:Hono + React
- スタイリング:(選択)
- データベース:(選択)
## 備考
(その他、気になる点や挑戦したいこと)
自分の言葉で具体的に書くことが大切です。
具体例:
# やることリストアプリの機能アイデア
## Must (必須)
- タスクの追加
- タスクの一覧表示
- タスクの完了/未完了切り替え
## Should (重要)
- タスクの編集
- タスクの削除
- 期限の設定
## Could (時間があれば)
- 優先度の設定
- カテゴリ分け
- 検索・フィルター
- 並び替え
## Won't (今回は見送る)
- 複数ユーザー対応
- タスクの共有
- 通知機能
- 繰り返しタスク
- 統計・レポート
画面を洗い出す
機能が決まったら、必要な画面を整理します。
画面スケッチの例: https://excalidraw.com/#json=iuZN2WftiqLGgWk1J6p_K,w574mZehayx4VC1hku9CGQ
テキストで整理する例:
## やることリストアプリの画面構成
1. タスク一覧
- タスクの一覧表示
- 完了/未完了の切り替え
- タイトル入力欄
- 期限入力(任意)
- 新規追加ボタン
2. タスク編集
- 既存データの編集欄
- 削除ボタン
シンプルに始めましょう。画面数は少ないほど簡単。
データ構造を考える
どんなデータを扱うか整理します。これが設計の基礎になります。
// タスクのデータ構造
interface Task {
id: string; // 一意のID
title: string; // タスク名
completed: boolean; // 完了状態
dueDate?: string; // 期限
createdAt?: string; // 作成日時
updatedAt?: string; // 更新日時
}
| フィールド名 | データ型 | 必須/任意 | 説明 |
|---|---|---|---|
| id | 文字列 | 必須 | タスクを識別するための一意のID |
| title | 文字列 | 必須 | タスクの名前 |
| completed | 真偽値 (true/false) | 必須 | 完了しているかどうか (true: 完了) |
| dueDate | 文字列 | 任意 | タスクの期限 (設定しなくてもOK) |
| createdAt | 文字列 | 任意 | タスクが作成された日時 |
| updatedAt | 文字列 | 任意 | タスクが最後に更新された日時 |
Note
データ型についてJavaScriptにはいくつかのデータ型があります。主なものは以下の通りです。
- 文字列 (string):
"こんにちは"のようなテキストデータ- 数値 (number):
42や3.14のような数字- 真偽値 (boolean):
true(真)またはfalse(偽)の2つの値- オブジェクト (object): 複数のデータをまとめたもの
- 配列 (array): 複数の値を順序付きで格納するもの
詳しくはデータ型とリテラルをご覧ください。
どんなフィールドが必要か、どんな構造か、どれが必須か、明確にしておくことがポイントです。
APIエンドポイントを設計する
REST APIの設計も機能の一部です。Honoで実装することを想定して設計しましょう。
GET /api/tasks # タスク一覧取得
POST /api/tasks # タスク作成
GET /api/tasks/:id # タスク詳細取得
PUT /api/tasks/:id # タスク更新
DELETE /api/tasks/:id # タスク削除
PATCH /api/tasks/:id/toggle # 完了状態の切り替え
| メソッド | エンドポイント | 機能 |
|---|---|---|
| GET | /api/tasks | すべてのタスクを取得 |
| POST | /api/tasks | 新しいタスクを作成 |
| GET | /api/tasks/:id | 特定のタスクの詳細を取得 |
| PUT | /api/tasks/:id | 特定のタスクを更新 |
| DELETE | /api/tasks/:id | 特定のタスクを削除 |
| PATCH | /api/tasks/:id/toggle | 特定のタスクの完了状態を切り替え |
:idの部分は実際のタスクのID(例: 123)に置き換えられます。
アプリアイデア例
参考として、いくつかのアプリアイデアを紹介します。
シンプルなToDoリスト
概要: シンプルなToDoリスト
Must (必須):
- タスクの追加・削除
- 完了/未完了の切り替え
- 一覧表示
メモアプリ
概要: Markdownで書けるシンプルなメモ帳
Must (必須):
- メモの作成・編集・削除
- メモ一覧表示
- 検索機能
経費管理アプリ
概要: 経費の入力と月次集計
Must (必須):
- 経費の登録(日付、金額、カテゴリ、メモ)
- 月別一覧表示
- カテゴリ別集計
Should (重要):
- CSV出力
- カテゴリの追加・編集
- レシート画像の添付
在庫管理アプリ
概要: 備品や商品の在庫を管理
Must (必須):
- 商品の登録・編集・削除
- 在庫数の増減
- 在庫一覧表示
Should (重要):
- 在庫アラート(残り少ない商品を強調)
- 入出庫履歴
- バーコード読み取り
予約管理システム
概要: 会議室や設備の予約を管理
Must (必須):
- 予約の作成・編集・削除
- カレンダー形式での表示
- 重複チェック
Should (重要):
- 繰り返し予約
- メール通知
- 承認フロー
上級:申請ワークフロー
概要: 申請 → 承認 → 完了 のフローを管理
Must (必須):
- 申請フォーム
- 承認者への通知
- ステータス管理(申請中、承認済み、却下)
Should (重要):
- 複数段階の承認
- コメント機能
- 申請履歴
開発アプローチを選ぶ
「UIライブラリを活用 (shadcn/ui、Chakra UIなど)」「自分で1から実装」どちらのアプローチも正解です。大切なのは完成させること。途中で行き詰まったら、アプローチを切り替えても構いません。 例えば「UIはライブラリを使うが、APIロジックは自分で書く」など、部分ごとに使い分けるのも良い方法です。
ポイント
- 間違えよう: 完璧を目指さず、とりあえず書いてみる、修正は後回し
- プランB歓迎: 作り始めてから変わることも多い。最初の計画に縛られすぎない
- 自分の言葉で説明してみよう: 他の人に説明してみると理解が深まる